肛門疾患について
痔は、成人の半数以上の方にみられるといわれる、直立歩行を始めた人間にとって宿命といわれる病気です。その痔には、さまざまな症状ががあります。
痔の種類
痔は大きく3つの種類です。
痔核(いぼ痔)
直腸肛門部の血行が悪くなり、血管の一部がふくれあがる症状 ※歯状線より上の粘膜の部分にできる『内痔核』、下の皮膚の部分にできる『外痔核』があります。
裂肛(きれ痔)
硬い便によって肛門上皮がさける症状
肛門周囲膿瘍・痔ろう
細菌感染が原因で、うみが出る症状
肛門科の診察の流れ
1.問診
問診表に症状を書き込み、医師に症状を伝えます。
2.診察
まずは視診です。目で肛門周囲の状態を見ます。
次は、触診・指診です。直接触れて痔の状態を調べます。
そして、肛門鏡による診察です。器具を使って肛門内の状態を調べます。
3.医師からの説明
診療の結果を医師から患者さまへ説明をします。現在のあなたの症状について、それから今後の治療法、治療計画をしっかりご説明させて頂きます。
痔の治療法
痔の治療法には大きく3つです。生活療法、薬物療法、手術療法です。手術療法を行う患者さまは、全体の1から2割程度の方です。ほとんどの患者さまが、規則正しい排便習慣や、食生活の改善などによる生活療法が基本になります。そして軽い症状の痔の場合は、お薬の治療で治ることが多いです。
内科的治療
痔の種類のうち、痔核(いぼ痔)・裂肛(切れ痔)に関しては、塗り薬を処方と、生活習慣の改善によって症状の改善を目指すことがほとんどです。当院ではこうした内科的治療をまず数ヵ月続けて、それで改善しなかった患者様へは、症状に応じてジオン注射や手術による治療法をご提案しています。
痔の大きな原因の1つは、便秘や下痢です。便秘による硬い便は、肛門を傷つけてしまいますし、下痢も肛門を刺激することになります。そこで生活習慣の改善では、まずは食生活の見直しを中心に行います。腸内環境を整えるため、食物繊維質や水分をたっぷりとってもらうよう指導しています。
その他、下痢になりやすい人は下痢になりにくいお薬、便秘の人には便がスムーズに出るお薬をご本人に合わせて処方し、スムーズな排便をサポートします。実際、この治療で症状が改善していくケースは、当初の予想以上に多いと実感しております。
ジオン注射治療
内痔核の治療法には、切らずに注射で治療する『ジオン注射療法』があります。手術と違って、この治療には痛みを伴うことはありません。痔核の痛みを感じない部分に注射するので出血や傷口が痛む心配もありません。
「脱出を伴う内痔核」「出血を伴う内痔核」にジオン注を投与して痔に流れ込む血液の量を減らし、痔を硬くして粘膜に癒着・固定させる治療法です。早い方は、翌日から脱出、出血がみられなくなります。このジオン注射治療は、平成17年の5月から医療保険で行えるようになっております。
痔と間違えやすい病気
実は、痔と似た症状の病気はいくつかあります。特に間違えやすい皆様にとって身近な病気は「大腸がん」「大腸ポリープ」です。痔だと思いこんで放置することは、とても危険です。お尻やお腹の症状、次のようなご心配な症状がある方は、まずはご相談ください。症状にあわせて専門の検査を行います。
- おしりからの出血
- おしりが痛い
- イボや脱肛が起きている
- おしりがかゆい
- 便秘や下痢を繰り返す
痔を予防するには
痔の原因となる排便痔は、いわゆる生活習慣病です。痔は、主に肛門に負担がかかる排便習慣が原因で引き起こすといわれています。排便習慣には、食事の内容や睡眠不足など、一人ひとりの生活習慣が大きく関わってきます。つまり痔は、いわいる生活習慣病です。
まずは肛門科へご相談ください
痔は、外痔核の場合は、痛覚のある皮膚の部分にできるので痛みを感じますが、内痔核は痛覚のない粘膜にできるので痛くはありません。しかし、内痔核も程度か進むと外痔核を伴うようになり痛みが発生します。
痛みのない初期の痔であれば、お薬と日常生活の注意だけで、症状はとても改善されるものです。恥ずかしがったり一人で悩まず、早期の段階で専門の医師の診療を受けることをお勧め致します。
痔を予防するコツ
毎日お風呂にはいる、おしりを綺麗にする、便秘・下痢に注意、トイレで強くいきまない、腰を冷やさない、座りっぱなしはよくない、胡椒やからしなどの刺激物は控えめにすることなどが、挙げられます。
生活習慣を改善することは、想像すると「ちょっと大変…」と思ってしまうかもしれません。しかし、お薬や治療で痔の症状が一旦改善しても、生活習慣・排便習慣がそのままでは、再発する可能性が高くなります。できることから少しずつ、生活習慣の改善に取り組むことをおすすめします。